広島高等裁判所岡山支部 昭和25年(う)182号 判決 1950年5月31日
被告人
浅沼泰一
主文
本件控訴を棄却する。
當審における未決勾留日数中七〇日を本刑に算入する。
理由
控訴趣意第一点について。
原判決引用の被告人の原審における供述と湯浅鉄三提出の被害始末書によれば、判示第一乃至第四の各被害物件は湯浅鉄三と被告人の伯父山崎利吉の共有であることが認められるのに、原判決がこれ等の物件をいずれも湯浅鉄三の単独所有のように誤認したこと及び記録を調べてみても判示第一乃至第四の罪について山崎利吉の告訴がないことは、所論指摘のとおりである。しかし、刑法第二四四条(同法第二五五条によつて同条を準用する場合を含む。)の被害者の中には所定の関係にない他人が加つて全被害者が不可分に損害をこおむる場合にはその適用がないものと解すべきであるから、各物件が前記両者の共有に属するものと認定しても、判示第一乃至第四の各罪について山崎利吉の告訴を必要としない。しかして又、原判決の右各物件の所有関係についての如上の事実誤認が判決に影響を及ぼさないことは明白であるから、論旨は結局その理由がなく、採用するを得ない。